バルサラの破産確率とは
一定の条件でトレードを繰り返した場合に、投資資金がゼロ(=破産)になる確率のことを「バルサラの破産確率」と言います。
ノースイースタン・イリノイ大学准教授だったナウザー・バルサラ氏が1992年に書籍『Money Management Strategies for Futures Traders』で示し、日本でも広く知られています。
バルサラの破産確率とは
バルサラの破産確率とは、一定の条件でトレードを繰り返した場合に、最終的に資金がすべて失われてしまう確率(またはその確率表)のことです。
確率表は0%~100%の範囲で示され0%は破産する可能性がないこと、100%は必ず破産することを意味します。
破産確率は少しでも小さいほうが良いです。
バルサラの破産確率を構成する3つの要素
バルサラの破産確率は、3つの要素から計算されます。
- 勝率
- ペイオフレシオ(リスクリワード比率)
- 1トレードあたりの投入資金の割合
破産確率を低くするには、勝率とペイオフレシオ(リスクリワード比率)を高くし、1トレードあたりの投入資金の割合を低くする必要があると考えられます。
勝率
全てのトレードに対する、勝ちトレードの割合(確率)。
勝率=利益回数÷総トレード回数
同一条件でトレードを繰り返す場合、勝率がより高いほうが資産が増えると期待でき、また破産確率は下がります。
逆に、勝率が低いと資産は減りやすく、破産確率が上がります。
このように勝率の高低は、バルサラの破産確率を上下させる重要な要素となります。
なお、実際のトレードでの勝率は、相場状況に応じて変化する可能性があります。
バルサラの破産確率においては、計算を簡単にするために勝率は一定だと想定しています。
ペイオフレシオ(リスクリワード比率)
負けトレード1回あたりの平均損失額(リスク)と、勝ちトレード1回あたりの平均利益額(リワード)の比率。
ペイオフレシオ=勝ちトレード1回あたりの平均利益額/負けトレード1回あたりの平均損失額
ペイオフレシオが1より大きい場合は、トレード1回あたりの利益が損失よりも大きいことを示します。
そして勝率が50%よりも高ければ、資産は増える計算となります。
ペイオフレシオが1の場合は、トレード1回あたりの利益と損失が等しいことを示します。
勝率がちょうど50%ならば、資産の増減はないという計算となります。
ペイオフレシオが1より小さい場合は、トレード1回あたりの利益が損失よりも小さいことを示します。
勝率が50%より高くても、状況によっては資産は減る計算となります。
1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合)
例)資金1,000,000円、1トレードあたりの投入金額100,000円 = 資金割合10%
1トレードあたりの投入資金の割合も、バルサラの破産確率に大きな影響を与えます。
1回のトレードで投資資金の全額を投入する場合、勝率とリスクリワード比率が両方とも高いとしても、わずかな回数のトレードで破産してしまう可能性が高くなります。
1トレードあたりの投入資金の割合を小さくすることで、破産の確率を抑えることができます。
バルサラの破産確率表の見方
バルサラの破産確率を決める要素は3つあり、1つの表で破産確率を正確に表現することは難しいため、1トレードあたりの投入資金の割合で表を分けて作成しています。
- 1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合)で固定
- 縦軸にリスクリワードレシオ
- 横軸に勝率
下記、6パターンを見ていきましょう。
- 1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):100%
- 1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):50%
- 1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):20%
- 1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):10%
- 1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):5%
- 1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):2%
縦軸のペイオフレシオは、0.5~7.5の15通で表示。
横軸の勝率は、5%から5%刻みで100%まで20通りで表示。
破産確率を示す数値は、0%~100%の間で表示。
1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):100%

勝率が5%の場合、ペイオフレシオが7.5でも破産確率が100%だとわかります。
その一方、勝率が90%でペイオフレシオが7.5ならば、破産確率は10%に留まります。
勝率90%、ペイオフレシオ7.5という優秀なトレード手法であっても、資金割合が100%だと、破産確率はゼロになりません。
堅実に資産を増やすためには、資金割合を小さくする必要があると考えられます。
1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):50%

資金割合を50%にすると、100%の場合に比べて自己資金をリスクにさらす割合が半分になります。
しかし、破産確率が100%となっている部分は依然として多く、劇的な変化はありません。
ただし、勝率が90%まで高いと、ペイオフレシオ2以上で破産確率は10分の1(1%)に減っています。
1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):20%

資金割合が20%まで小さくなると、100%の場合に比べて自己資金をリスクにさらす割合が5分の1になります。
破産確率がゼロの範囲が大幅に増加します。
破産確率が100%の範囲も多いものの、資金割合を小さくすることが重要だとわかります。
勝率が80%以上でペイオフレシオ1以上あれば、ほぼ破産するリスクはなくなることがわかります。
しかし、勝率80%以上を継続することは現実的に厳しいです。
1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):10%

資金割合が10%まで小さくなると、100%の場合に比べて自己資金をリスクにさらす割合が10分の1になります。
破産確率がゼロの範囲がさらに増加します。
勝率が70%以上でペイオフレシオ1以上あれば、破産するリスクはゼロになります。
かなりの投資の玄人であれば、この条件を継続できるかもしれませんがまだリスクあると言えるでしょう。
1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):5%

資金割合が5%まで小さくなると、100%の場合に比べて自己資金をリスクにさらす割合が20分の1になります。
破産確率がゼロの範囲がさらに増加します。
勝率が60%以上でペイオフレシオ1以上あれば、破産するリスクはほぼゼロになります。
投資経験者であればこの条件を継続できる可能性があると言えるでしょう。
資金割合は5%以下で行うと良いかもしれません。
1トレードあたりの投入資金の割合(資金割合):2%

資金割合が2%まで小さくなると、100%の場合に比べて自己資金をリスクにさらす割合が50分の1になります。
勝率が50%以上でペイオフレシオ1以上あれば、破産するリスクはほぼゼロになります。
投資初心者や慎重派な方は資金割合は2%以下がおすすめです。
バルサラの破産確率に関する注意点
- 数学的に計算した表に過ぎない
- 高すぎるペイオフレシオ(リスクリワード比率)は現実的ではない
数学的に計算した表に過ぎない
バルサラの破産確率は、一定の条件でトレードを繰り返した場合の計算結果を示しており、実際の運用で期待通りに機能するかどうかについては誰にもわかりません。
相場を当てることは未来の予測であり誰にも確実な未来はわからないのです。
トレードで常に一定の勝率やペイオフレシオを確保するのは難しく何らかの理由でこれらの要素が変動すれば、破産確率も変動します。
バルサラの破産確率は、あくまでも過去の勝率が将来も変わらないという前提に立っていることを理解してください。
高すぎるペイオフレシオ(リスクリワード比率)現実的ではない
高すぎるペイオフレシオ(リスクリワード比率)の範囲は、実用性が乏しい可能性があります。
FXの短期売買では、ペイオフレシオ2前後が目標とされる傾向があります。
この水準を3倍、4倍と大幅に上回るのは、難しいと考えられます。
そのため、ペイオフレシオ(リスクリワード比率)が高い範囲は、目指すべき目標ではなく参考程度にしておきましょう。